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宮崎駿氏が、ベネツィア映画祭で、「栄誉金獅子賞」を授与された。 氏が評価されたのは、ここ近年の「千と千尋の神隠し」によるベルリン映画祭金熊賞受賞、アカデミー賞長編アニメ部門グランプリ、「ハウルの動く城」でのベネツィア映画祭オゼッタ賞受賞、というところだが、ヨーロッパの映画評論家は、どのくらい宮崎駿氏の過去の作品を見ているのだろうか? どうも、欧米の評論家は、日本作品の評価が遅れていて、あとから表彰しているといった印象を受けざるを得ない。北野作品こそ、「HANA-BI」がベネツィア映画祭金獅子賞を取ったが、北野作品なら、あるフランス人の映画評論家がいっていたことに全面的に賛成なのだが、「あの夏いちばん静かな海」が最高だったと思う。 故黒沢明監督は、ハリウッド作品に大きな影響を与え、西部劇映画「荒野の七人」は「七人の侍」のあからさまなパクりであった。「荒野の用心棒」もしかりである。故に、亡くなる直前か、直後に、アカデミー賞で「名誉賞」を受賞されたのである。 宮崎アニメに対する評価として、今回の受賞に寄せられたコメントは「宮崎駿氏の作品は、日本アニメの枠を飛び出し、ヒューマニズムとロマンチシズムにあふれ、創造意欲は栄誉賞にふさわしく”日本のディズニー”と言って間違いない」という趣旨のコメントで、さすが、ヨーロッパだけあって、単なる日本アニメと宮崎作品が違うことと、宮崎アニメが持つ(ほかの日本アニメや世界のアニメには無い)ヒューマニズムを汲み取っているので(ディズニーしか評価しないアメリカとは違う)、「能く観ているなあ」という感想を受けたが、どこまで作品を見ているのかは知らない。 宮崎作品は、はじめは子供向けではなかった。いまでも子供向けというより、年齢層を超えて楽しめる内容になっている。宮崎駿氏のアニメ作家としてのスタートは、「アルプスの少女ハイジ」や「母を訪ねて三千里」などの、いまジブリ作品を見ている人の親世代が見ていた作品にある。 その後「ルパン三世」のテレビ版などを経て、アニメ映画の世界へ入っていく。 最初に本格的に制作指揮をとったのは、名高い「ルパン三世 カリオストロの城」である。「ルパン三世」らしく笑える場面がいっぱいあるこの作品で、アニメ監督としての地位を確立した。ちなみにこの頃から、アニメのキャラクターに恋する、「アニメおたく」の最初の人たちが出てきて、この作品のヒロイン「クラリス」が人気を博した(もちろんそれ以前から、峰不二子が世の男性のあこがれであったのは言うまでもなく、それはアニメファンに限ったことではなかった。ルパン三世は大人に人気があったのだ)。 「ルパン三世 カリオストロの城」が公開されたのが1979年だから、しばらくのブランクを経て、準備万端で望んだのが、監督としての初めての作品「風の谷のナウシカ」である。1984年当時、小学生であった私は、地下鉄の吊り広告に、アニメの宣伝がされることは当時まれだったのでよく記憶している。「今年は、ナウシカの年です」というコピーは、まだ何も知らない小学生だった私も、そのナウシカの絵とともに、強烈に引き寄せられるものがあった。 「風の谷のナウシカ」で何といっても画期的だったのは、プロローグとして出てくる”火の七日間戦争”が核戦争のメタファーだったこと(つまり巨神兵は核兵器を表しているのですね)、”腐海”を使って、環境破壊への批判を展開していることである。これほどの先進性を持ったストーリーは、当時の日本の文化基準をはるかに越えていた。環境問題に言及していたのは、日本の文壇では窓際族的扱いだったSF作家だけであった頃だったのだ。 ちなみに、漫画としての「風の谷のナウシカ」はもっと複雑で、映画よりも多くの要素を含んだ長編作品である。権力争いや、”腐海”を兵器として使う人々、戦争による多くの悲劇、残された大地への移住、という骨太のストーリーとなっている。 次作の「天空の城ラピュタ」は子供たちにもわかりやすい話だったと思う。でもここでも、科学技術の持つ危険性がテーマになっている。「人間は土を離れては生きてゆけない」はいまでも私の中に大きなテーマとして残っている。 その後の「魔女の宅急便」や「となりのトトロ」からはもうおなじみとなっていき、宮崎作品は、ディズニーアニメよりも日本人の共通文化となっていった。 と、こうした宮崎作品のテーマ性、歴史をふまえて今回の受賞に至ったのかは、わからないが、まだヨーロッパで公開されていない過去の作品群を、ぜひヨーロッパの人に観てもらいたいのである(アメリカ人には理解できないだろう)。日本のアニメとなると、「AKIRA」や「攻殼機動隊」のような作品がイメージ的に先行していて、ヒューマニズムを前面に押し出した、ジブリ作品が日本の文化として広まらないのは、日本人として、とても惜しいと思うのである。
by journalism-1
| 2005-02-10 11:12
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